会社案内|Company

代表取締役社長 河野 初 インタビュー

代表取締役 河野 初
【代表取締役社長  河野 初】

プロフィール
1948年東京都生まれ。工学院大学建築学科卒業。70年から建築設計事務所で、主に商業施設や住宅の建築意匠を手掛ける。79年独立し、江陽設計を設立、代表取締役就任。92年、ホテルの企画と運営を手掛けるルネッサンスを設立、代表取締役に就任。一級建築士、宅地建物取引主任。

>> 特別コンテンツ『旅籠の親父からのお便り』

 


まず、ホテル運営を始めたいきさつから聞かせてください。

私はもともとデザイナーです。以前は建築事務所を経営し、さまざまな商業施設や住宅の建設を行なっていました。
デザイナーが建築を設計する際に想定しているのは「こんなふうに使ってほしい」という空間イメージです。しかし、できあがった建物を後で見に行くと、そのイメージとはかけ離れ、がっかりすることも少なくありません。
また、建物を使っていく中で、ぜひここはメンテナンスしてほしいと思うところなども、施主に渡してしまった後は諦めるしかないというのが、デザイナーの寂しさでもありました。
そこで、いつか自分でデザインした建物を、大切にケアしながら息付かせていくことができればと思っていたのです。
建物を他人に渡す場合、100%完璧なものを納品するのが基本ですが、自分のものであれば、適切なメンテナンスをしながら2〜3年後に完成させることも可能です。
こうした希望をかなえられるのが、ホテルの運営だったのです。


初めて企画から手掛けた五反田の「アリエッタ」について聞かせてください。

アリエッタホテル&トラットリア

五反田の「アリエッタホテル&トラットリア」は、10年前に更地を購入し、都心でリゾートテイストが感じられる、中庭と回廊のあるホテルを作りたいと思って企画しました。しかし、その図面を見せると皆「これでは客が来るわけがない」と言いましたね。
なぜなら、冬は寒くて夏は暑い。客室のドアの外にある廊下が屋外に面していたからです。しかし私は、気候のよいときには、絶対にその方が気持ちいいはずだという確信がありました。それに盛夏と厳冬は一時期だけです。メリットの方が大きいと思いました。
全体的なイメージとしては、欧米にあるようなプチホテルを目指していました。1階には有名なレストランがあり、それはそれで賑わっている。そして、一見目立たないようなところにホテルの入り口があり、入ってみるととびきりおしゃれ、というような。
結果として、その個性的な造りから、一部のお客さまには支持されなかったものの、一度気に入っていただくと、いつまでも離れないホテルになりました。リピーターは現在4割程度で、この数字はオープンからずっと変わりません。稼働率は93%で、日曜の夜以外はずっと予約が入っている状態です。


勝因はどこにあると考えますか。

手ごろな値段で、おしゃれで清潔。それが女性に好まれたからでしょう。5割近くが女性のお客さまです。女性の多さは当社の他のホテルも同様ですね。基本的にはビジネス滞在がメインであるために、男性の方が多いものの、平均すると4割が女性客です。
オープンして半年も経たないうちに、ホテルの専門誌ではない、ファッション誌の取材が多く入るようになりました。アリエッタでファッションフォトの撮影をしたいというのです。
当時、マスコミに対するPRは行なっておらず、やり方も知らなかったのですが、おそらく関係者がホテルの前を通ったり、知り合いが泊まったりして耳にしたのでしょう。街中でアリエッタの話をしているのを聞くようになったのも、それから間もなくのことです。


路面のトラットリアも目を引きますが、ホテルとレストランの関係は。

パネッテリア アリエッタ

ホテルは、レストランより10倍近い利益率を出すことができます。しかし、外から見たときの表現力、すなわちホテルのイメージを作り出すのは圧倒的にレストランの方なのです。
ですから、私は1階の路面店には大きなこだわりがあり、ホテルを作るにあたり、まずレストランの名前を付け、それをホテルの名前に掲げました。
「トラットリア アリエッタ」はテナントですが、こちらも非常に好調で、夜は予約がないとなかなか入れない状況です。また、併設のベーカリー「パネッテリア アリエッタ」も人気ですね。ここのパンは天然酵母で作られており、翌日のホテルの朝食でも提供しています。


ホテルの空間づくりで、大切にしていることは何ですか。

メンテナンスにお金がかかる建物は作りたくない、というのが普通の考えだと思いますが、私は手間のかかる建物を作りたいと思っています。
ホテルは生きもの。作って終わるものではありません。メンテナンスしてお客さまの反応を見るというよりも、随時メンテナンスして建物を息付かせていないとお客さまは定着しないという考えです。具体的には塗り替え、吹き替え、張り替え、そして植物の手入れですね。これらは建物の生気に欠かせない大切な要素だと思います。
例えば当社のホテルでは、入り口のテント地を2年半に1度は替えています。この色やテイストを変えるだけでも、随分とリフレッシュするものです。また、内装も定期的に時代に合ったものに変更していますし、大阪の「アリエッタ ホテル」では、ロビーの植物に1日2回の水やりをスタッフの日課にするとともに、花も定期的に変え、フレッシュなイメージを演出しています。


バススペースも特徴的ですね。

バスルーム

通常、ビジネスホテルのバスルームはドアで仕切られていますが、当社のホテルは居室と同じフローリングのフロアにバススペースを設けています。感覚としては、部屋の中にバスタブがある感じですね。基本的にお一人で滞在する方が多いので、少しでもゆったりとバスタブにつかっていただきたいと思ったのです。
そのため、どのホテルにも既製のユニットバスは使っていません。基本的には長めのバスタブで、2007年に開業した「サットンプレイスホテル博多」と、同年リニューアルオープンした「サットンプレイスホテル上野」は、ジャクソン社製を使用しています。ジャクソンは、今後オープンするホテル全てに導入予定です。
また、バスタブとシャワーブース以外は全てドライエリアになっており、防水加工していないのも特徴です。施工業者にバスルームの見積もりを依頼すると、防水加工は必ず見積もりに入ってきますが、これを省くと1ホテルで何百万円かは削減できます。
そもそもバスルームに防水加工がしてあるのは、日本のホテルくらいですよ。
もちろん、バスタブのお湯があふれて床が水浸しになったことも過去に何度かありましたし、洗い場で背中を流せないなら泊まれない、とお帰りになった方もいらっしゃいました。しかし、それもまたこのホテルの個性だと思っています。


ホテルを作る際に目安にしている客室の広さ、価格、規模、稼働率は。また、アリエッタの総投資額、月商、ビジネススキームはどうですか。

客室の広さは最小で13㎡。ただ、バスルームの工夫で通常よりも広く見えます。客室はシングルが6割以上です。
単価は地域によって幅はありますが、6,000〜9,000円で、周辺ホテルよりも少しお得に感じられる価格に設定しています。規模は150室くらいまで。400〜500室になると、それなりの設備も必要になってきます。
稼働率は、最初の3ヶ月は65%、半年で80%程度を目標にしています。全体では、売上から家賃、人件費、光熱費などの営業経費を差し引いて、1ホテル当たり500万〜1億円の営業利益が出るのを目安として計画しています。
五反田のアリエッタの総投資額は約8億円、月商は2,300万円、年商は約3億円弱です。
建物は、すでに個人の方に売却ました。当社では基本的に建物を所有せず、投資回収のビジョンを描けたところで売却し、大家さんを探す”賃貸借スタイル”が基本です。
現在は20年間賃貸契約を結び、運営しています。売却金は次の展開に充てる予定です。


ホテルにはどんな立地条件を求めますか。

今後新しいホテルをオープンさせるなら、特に力を入れたいのが都内です。それから名古屋、京都、大阪、博多、横浜も検討しています。
都内は、具体的なエリアにこだわりはありませんが、駅付近よりも、繁華街や飲食店が近くにある方がいいですね。なぜなら、出張先で仕事が終わり、食事や酒の付き合いの後、少し歩けばホテルに帰られるという環境の方が、ビジネスマンにとってはうれしいものです。繁華街は危ないという話もありますが、ひとたびホテルの中に入れば安全ですし、朝になれば夜の雰囲気はなくなります。


今後の展開をお聞かせください。

現在、依頼案件は多くありますが、まず条件として、企画・設計はこちらでやらせてほしいとお願いしています。
実際の図面は、他の設計事務所に依頼していますが、土地の精査、企画、建物ができあがるまでの監修が行なえる案件を手掛けていく方向です。

基本的に、私が目指しているリゾートライクなホテルは土地に余裕がないと作れないのですが、なかなか土地探しが難しいものです。得に、都心部のホテルに吹き抜けや中庭を造ると、どうしても採算が取りにくくなりますが、今後は坪庭のようなものを備えた、開放感のあるホテルを多く作っていきたいと思います。